展覧会

線の迷宮〈ラビリンス〉Ⅲ 齋藤芽生とフローラの神殿

概要

展覧会名線の迷宮〈ラビリンス〉Ⅲ 齋藤芽生とフローラの神殿
会期2019年10月12日(土)~2019年12月1日(日)
休館日月曜日 ただし、10月14日(月・祝)及び11月4日(月・休)は開館し、10月15日(火)及び11月5日(火)は休館。
時間10:00〜18:00(入館は17:30まで)
観覧料一 般 800(600)円
大高生・65歳以上 600(500)円
中学生以下 無料
*障がい者手帳をお持ちの方とその付添の方1名は無料。
*(  )内は20名以上の団体料金。
*目黒区内在住、在勤、在学の方は、受付で証明書類をご提示頂くと団体料金になります。
*各種割引の併用はできません。
主催等主催:公益財団法人目黒区芸術文化振興財団 目黒区美術館
協力:ギャラリー・アートアンリミテッド、町田市立国際版画美術館
関連展示「齋藤芽生の四畳半」閉室日のお知らせ

関連展示「齋藤芽生の四畳半」について催事により次の日程は閉室します。
10月19日(土)
11月2日(土)・3日(日・祝)・24日(日)

解説

目黒区美術館では、これまで「線の迷宮〈ラビリンス〉」と題し、線の魅力と可能性に迫る企画を、「細密版画の魅力」展(2002年)、「鉛筆と黒鉛の旋律」展(2007年)とシリーズで展開し、好評を得てきました。第3回目となる本展では、過去と現代のはざまを独自の視点で捉える画家 齋藤芽生の絵画世界と、19世紀植物図鑑の名作《フローラの神殿》を紹介します。

「美術と文学の間で揺れ動いていた若い私にとって、博物学への興味は新鮮なビジョンをもたらした。一枚で独立した絵画ではなく、言葉と複数の絵からなる博物図鑑として、ものごとの体系を表現するアイディアを得たのだ。観察対象は外界の自然物ではなく、「表立って語られることのないひそやかな人生の縮図」だった。」
このように作家が語る、制作初期の《毒花(どくばな)図鑑》や《日本花色考》には、花に託された思春期の心理が、図鑑のかたちで表現されています。やがて花のモチーフから離れ、箱型の団地の窓を扱う一連のシリーズが始動。自らが幼少期を過ごした団地の記憶を元に描いた《晒野団地四畳半詣(さらしのだんちよじょうはんもうで)》では、窓枠の奥に人々の気配が描かれます。そしてその後、窓のうちの居住者へ向けられていた作家の観察眼は、外へと向かいます。図鑑や窓といった形式から脱し、日本各地への旅を重ねながらイメージを収集した現実の記録と過去の記憶がモチーフとなった《密愛村(みつあいむら)Ⅲ・Ⅳ》や《野火賊(のびぞく)》。ここでは、ロードムービーの一場面をみるかのように、今も街道沿いに遍在する歓楽施設の跡地などが再構築されています。同時に、学生時代の作家にも刺激を与えたという植物図鑑《フローラの神殿》を展覧します。本作には、28種の花々の堂々たる姿が描かれるとともに、他に類を見ない詩的な背景描写がなされ、19世紀における世界へのまなざしを見て取ることができます。

本展は、齋藤芽生作品(約100点)と、植物図鑑の至宝《フローラの神殿》(30点)を同時に展覧し、「図鑑」のように複数の絵画と言葉で社会を描く現代作家の魅力に迫ります。

展示構成

齋藤 芽生

1 花の迷宮

第1章は、大学2年時の作品《毒花図鑑》(1993年)、そして大学4年時の卒業制作以来、初の展示となる《日本花色考》(1995年)及び、これらの作品群を展開させた《徒花(あだばな)図鑑》(2008年)で構成します。ものごとを細やかに観察し、そして系統だてて分類する図鑑形式を取りながら、花に託して描かれているのは、繊細な人間の心のニュアンスです。ここには、観るものが思わず、我が身を振り返るような鋭さがあります。

齋藤芽生《徒花図鑑「間男蔓」》2008年 個人蔵 Photo ©Ken Kato Courtesy of gallery Art Unlimited

齋藤芽生《徒花図鑑「斜陽葵」》 2008年 個人蔵 Photo ©Ken Kato Courtesy of gallery Art Unlimited

2 窓の光景

第2章では、団地をテーマにしたシリーズから、《晒野団地四畳半詣》(2006年)他を展覧します。画一的な窓枠の奥に潜む人々の気配を描き出す作品は、かつて子ども時代を過ごした都市郊外の団地の記憶と、後にその故郷を再訪した経験をもとに描かれています。対象を深いまなざしで捉えた本作は、人の営みの図鑑ということができるでしょう。同時に、この団地の窓のモチーフは、はじまりを幼少期にまで遡る、作家自身の表現の原点でもあります。

齋藤芽生 《晒野団地四畳半詣「姥捨小町鉄の浮橋」》 2006年 個人蔵 Photo ©Ken Kato Courtesy of gallery Art Unlimited 

3 旅をする魂

前章までの図鑑や団地の窓など、型を反復するモチーフから離れ、作家が積極的に始めたのは、旅の光景の収集でした。第3章では、近作《密愛村Ⅲ・Ⅳ》(2011・16 年)、《獣道八十八号線》(2011 年)、《野火賊》(2015 年)、《暗虹(あんこう)街道》(2018 年)を紹介します。日本人のマイホームやレジャーへの憧憬の産物が、廃棄できない「時代の遺物」と化していく光景を捉えた作品には、現代に投げかける、作家独自の視点を見ることができます。

齋藤芽生 《密愛村Ⅲ「密輸される乙女たち」》 2011年 個人蔵 Photo ©Ken Kato Courtesy of gallery Art Unlimited 

齋藤芽生 《密愛村Ⅳ 「蝉時雨を売る少女」》 2016年 個人蔵 Photo ©Ken Kato Courtesy of gallery Art Unlimited

《フローラの神殿》

19世紀の植物図鑑の名作《フローラの神殿》(1798-1807年刊行)は、博物学者 リンネが始めた雄しべと雌しべによる植物分類法に感銘を受けた、ロバート・ジョン・ソーントンにより編集されました。学生時代の齋藤芽生にも刺激を与えたという本作には、28種の花々の、堂々たる姿が描かれています。同時に、背景が無地となることの多い植物図鑑には珍しく、急峻な山岳や渓谷、古城など、趣向を凝らした世界各地の風景が描写されており、当時の世界に対するまなざしを見て取ることができます。

R.J.ソーントン編、ライナグル画 スタドラー版刻 《フローラの神殿「ベニゴウカン」》1799年 町田市立国際版画美術館蔵

R. J.ソーントン編、ライナグル(花)とペザー(風景)画 ダンカートン版刻 《フローラの神殿「夜の女王」》 1800年 町田市立国際版画美術館蔵

作家略歴・作品紹介

齋藤 芽生(さいとう めお)

1973年東京都生まれ。現在東京在住、東京藝術大学准教授。おもな展覧会に、「VOCA 展 現代美術の新しい地平―新しい平面の作家たち」(上野の森美術館、2005・2010年)、「アーティストファイル2009―現代の作家たち」(国立新美術館、2009年)、「祝祭と祈りのテキスタイル」(熊本市現代美術館、2010年)、「大原美術館 秋の有隣荘特別公開 齋藤芽生 密愛村」(大原美術館、2016年)他がある。また、おもな出版物に、作品集『徒花図鑑』(芸術新聞社、2011年)、『四畳半みくじ』(芸術新聞社、2014年)、絵本『吸血鬼のおはなし』(福音館書店、2009年)、絵本『カステラ、カステラ』(福音館書店、2013年)などがある。

《フローラの神殿》

1798-1807 年刊行の植物図鑑である。編者 ロバート・ジョン・ソーントンは、博物学者 カール・フォン・リンネの雄しべと雌しべによって植物を分類する方法に感銘をうけ、本書の刊行を決意した。植物図鑑は無地の背景に草花を描くことが一般的だが、ソーントンは花々にそれぞれ趣向をこらした背景を与え、類例の無いものを編み出した。例えば「夜の女王」では、後方に描かれた時計台や月からその開花時刻をうかがい知ることができる。このように詩的で物語を感じさせる背景が《フローラの神殿》の魅力である。

関連イベント

対談 (「線の迷宮<ラビリンス>Ⅲ」関連イベント)

日時2019年10月19日(土)14:00~15:30(予定)
会場目黒区美術館ワークショップ室
話し手山下裕二(明治学院大学教授)× 齋藤芽生(本展出品作家)
申込方法事前申込制/先着順50名
聴講無料(ただし、高校生以上は当日有効の本展観覧券が必要です)

ミュージアムコンサート (「線の迷宮〈ラビリンス〉Ⅲ」関連イベント)

世界各地を巡り、自由に音楽を奏でるインストゥルメンタル・デュオ「mama! milk」が紡ぎだす世界をお楽しみください。

日時2019年11月3日(日・祝) 15:00開演(14:45開場)
会場目黒区美術館ワークショップ室
出演mama!milk(生駒祐子/アコーディオン・清水恒輔/コントラバス))
チケット料金全席自由2,500円
※チケットご購入の方はコンサート当日に限り、チケットのご提示で展覧会をご覧いただけます。
※未就学児の入場はご遠慮ください。

齋藤芽生ギャラリートーク (「線の迷宮<ラビリンス>Ⅲ」関連イベント)

出品作家・齋藤芽生氏が展示室をめぐりながら作品解説を行います。

日時2019年11月23日(土・祝)、11月30日(土)、12月1日(日)各日14:00~15:00(予定)
料金無料(ただし、高校生以上の入場には当日有効の本展観覧券が必要です)
定員各回30名(先着順)
参加方法受付は終了しました
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